といっても、机の周りはこのように片付けましょう、というだけの本ではない。
「空間」「情報」「思考」の整理術について書かれているが、キモは「情報」「思考」の整理のほうだ。
デザイナーが書いた本なんて役に立たないだろ、と思っている人にこそ読んでいてもらいたい。
本質を捉える究極の方法
本書の英題は、KASHIWA SATO'S Ultimate Method for Reaching the Essentials
直訳すると「佐藤可士和の本質を捉える究極の方法」。邦題である「整理術」よりも英題のほうがこの本の内容にふさわしい。
具体例として挙げられているのが、国立新美術館のシンボルマーク作成や、ユニクロのTシャツブランドのビジネスモデルデザインなど、あまりに特殊な仕事なので分かりにくいが、著者が示す、
P47
- 状況把握 / 対象(クライアント)を問診して、現状に関する情報を得る。
- 視点導入 / 情報に、ある視点を持ち込んで並べ替え、問題の本質を突き止める。
- 課題設定 / 問題解決のために、クリアすべき課題を設定する。
という問題解決の流れはどんな仕事にも通用するものではないだろうか。
「2.視点導入」はちょっと分かりにくいかもしれない。
このフェーズの目標は、ビジョンを持つ、あるべき姿を明確にする、ということ。本質をつかむ、といっても良いだろう。
そのために、「情報」の整理、つまり、
P214
という作業を行う必要があると著者は主張する。
- 視点を引いて客観視してみる
- 自分の思い込みをまず捨てる
- 視点を転換し、多面的に見てみる
多面的な視点で物事を見て、今ある「情報」を整理することで、ようやく本質をつかむことが出来るのだ。
さらに、まず情報を集めるフェーズ(1.状況把握)において、著者のように相手(クライアント)がいるような仕事の場合は、相手の「思考」を整理する必要がある。著者が挙げるその際のポイントは、
P215
ということだ。言語化しなければ自分と相手との間で思考を共有できない。合っているのか間違っているのかも分からない。当然といえば当然の話。
- 自分や相手の考えを言語化してみる
- 仮説を立てて、恐れず相手にぶつけてみる
- 他人事を自分事にして考える
状況を把握し、目標に対する課題を設定する―。
著者の整理術というか問題解決の手法は非常にオーソドックスなものだ。クリエイティブな仕事だからといって、奇抜なことをやっているわけではなく、むしろ基本に忠実といって良い。その基本をしっかりと突き詰めて行っていることが成功の要因なのだろう。
クリエイティブ・ディレクターなんて聞くと、何となく感性で動いてそうな印象だったが、佐藤可士和氏の場合、少なくとも課題を設定するところまでは非常に理知的に考えているのだと分かった。
デザイナーが書いた本なんて役に立たないだろ、と思っている人にこそ読んでいてもらいたい。


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